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心の回診

第一五〇回

ホワイトアウトと言う言葉を、私は初めて知った。こんな恐ろしい自然現象があったのだ。視界は零、人も車も動けず、自然の猛威、恐怖の映像が、テレビを通して放映されている。いたる所で車が立ち往生し、窓ガラスが雪で埋まっていた。救助されるまでの時間、生きた心地がしなかっただろう。
積雪が強風にあおられて、白一色の中に閉ざされる。これが“ホワイトアウト”と呼ばれる現象なのだそうだ。私も何度か息もできない程の大雪、吹雪の経験をした事はあるが、ホワイトアウトは初めてだ。思わずテレビの前に正座をして、両手を合せて、神様仏様に祈りながら、ニュースに耳を傾けた。恐怖の最中に、雪山の中に閉じ込められている方達の命を「救って下さい」と祈った。一夜が明けて、穏やかな大きな空が広がったが、むごいことに何人かが犠牲になってしまった。
人間の命は、“尊い”の一言に尽きる。三月は、卒業、就職、進学の季節だ。将来に、夢を風船のように大きく膨らませている若人が、いっぱいいる事だろう。ホワイトアウトなどに大切な命を奪われたりしたら、頑張ってきた意味がなくなってしまう。
半世紀前、人種を超えた平等の社会を夢見たキング牧師の最大の功績は、教育の平等を実現する事だったそうだ。初来日して、講演活動を行った牧師は、日本の若者の素晴らしさに感銘したと言う。「若者は、電車の中でも勉強をしていた」と。米国では、見た事のない光景だったらしい。「日本人は、地球上で、最も優秀な人種。もっと自信を持つべき」と評価してくれた。
蛍の光♪窓の雪♪三月は学生達が、学び舎を去る季節。セーラ服姿で友と別れたあの日が懐かしくてならない。あの、高校生活の三年間は、レモンの香りがする。甘酸っぱい初恋の思い出と共に、大切な生涯の友とも出逢える事ができた、まさに青春だった。