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心の回診

第四十一回

有難い事に「心の回診」のファンが増えてきた。「読みましたよ」と毎号感想を言って下さる方や、ひばり交通のFさんとは目的地に着くまでの間中話しが弾み花が咲く。内容をしっかり覚えて下さっている事に感謝だ。
中でも、心の回診を一番楽しみにしてくれている人がケアハウス桜の入居者の富野氏だ。「今度はいつ載るの?」と、心待ちにして貰えるのは書き手としては 大きな喜びだが、富野氏は、私の私生活がハッピーな内容はどうも好まない様だ。苦労話しとか、ホロリと涙が頬に伝わる内容の方が高い評価を頂ける。
独り暮しの生活の中で、栄養面の事、身体的な事などをしっかり自己管理をして頑張って来た芯の強さは、時々辛口の批評ともなって私を刺激し励ましてくれる。富野氏のハートをギュッと掴むものを書こう…しかし力むとペンが遅々として進まない。
ケアハウス桜が開設して5ヶ月を迎えた。私が与えられた人生の仕事、成すべき私の仕事の中で、この施設がなければ決してこの世で出会えなかった方達が、 まるで昔からの知り合いであったかの様に一つ屋根の下で暮らしている。不思議なご縁に生かされている事に頭をたれる。そして素直に「お陰さまで」と感謝の 心が溢れて来る。目には見えない神様とか仏様とか言う方に目を向ける。人には8つの苦しみがあるそうだ。「生老病死」の四苦に加えて愛する人と離れる「愛 別離苦」。私はこれに孤独を加える。独りでいても孤独を感じない、貧しくても侘びしくない。死に瀕していても心安らかでいられるとしたら、それは人と人と が心寄せ合えるからで、反対に沢山の人に囲まれて沢山のお金に埋もれていようとも「私は今淋しい」と訴えられる人がいなければ、誰がのためにお金を使える のでなければ、きっと人は悲しくて生きて行くのがつらいだろう。昨日までは赤の他人だった人達が、こんなにも肩を寄せ合って労り合って生きて行けるのだ。 人間って素晴らしい。生きているのが幸せ、明日が来るのが楽しみなケアハウス桜は、実は入居者の方達が基礎造りを始めてくれていた、立春が過ぎ、太陽の位 置が春の領域に入った。桜の花の事を春告花とも言うそうだ。ご存知でしたか?さあ、心も軽く頑張りましょう。

(医療法人中山会新札幌パウロ病院会長)