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心の回診

第一〇四回

ヤーッ、いい天気でないかい?四匹のでっかいこいのぼりがパウロの青い空をビュン!ビュン!と泳いでいる。こいのぼりと一緒に「春だよぉ!ッ!」と叫びたくなった。生きているっていいよね。時に は泣く・・・でも余裕の事がない限り解決できるもの。いつもそうやって救われてきた。だから私は頑張 る事ができるのだ。

数日前、入院相談をさせて頂いたA子さんも山程の苦労を訴えそのあと一緒にこいのぼりを眺めて笑 顔になって帰って行った。A子さんの相談とは久し振りのクラス会を楽しみにしていた矢先、姑の介護疲れから自分が倒れてしまった。姑は重度の認知症。

御飯を食べた事もすぐ忘れ「ごはん」「ごはん」と騒ぐ。トイレは間に合わず日に何回掃除をする事か・・・オムツは「あずましくない」と言って外してしまう。夫は仕事を理由に非協力的だ。「クラス会どころでなくなりました」としょげている。

「夫側の姉妹の協力は得られませんか?」「各々の生活があるので無理」と言う。幸いお姑さんは年金も含めて経済的には問題ない事が分かった。「そのお金を お姑さんのために使う事を御主人に相談されたらどうでしょう?介護をした人に報酬を出すのです。”ありがと報酬”として」。

ご主人は「おばあちゃんのお金を本人のために使うのは大賛成だ」と言ってくれたとの事。早速二人のお姉さんとA子さんは、一週間毎の当番を決めて、三人介 護が始まった。介護の回数も公平にあたるようアドバイスをした。どうなったか心配していた矢先、電話がきた。「理事長さん、大成功!お姉さん達も協力的で なにせ”ありがと報酬”が入るっしょ。

私が当番の時はね、おばあちゃんをピカピカにするの。したらね、ばあちゃんがね、私の手が一番優しくてめんこい手だってさ!」ウーン!いい話でないかい?修子さんもなかなかやるじゅあないの。いかった、いかった。これにて一件落着。
(医療法人中山会新札幌パウロ病院理事長)